会社に合った退職金制度を考えるために
退職金制度には、確定給付企業年金(DB)、企業型確定拠出年金(DC)、中小企業退職金共済(中退共)、会社独自の退職金制度など、さまざまな種類があります。
それぞれ、退職金の決まり方、会社の費用負担、資金の管理方法、従業員への説明や運用方法が異なります。
そのため、制度の知名度や一つの特徴だけで選ぶのではなく、
- なぜ退職金制度を設けるのか
- どの従業員を対象とするのか
- 会社が継続して負担できるか
- 社内で無理なく運用できるか
- 従業員にとってわかりやすいか
などを整理したうえで、自社に合った制度を検討することが大切です。
eTAISHOKUKIN.netでは、各退職金制度に対応する社会保険労務士の情報を掲載しています。制度の特徴や相談内容を確認しながら、自社に合った相談先を探すことができます。
主な退職金制度
1.確定給付企業年金(DB)
確定給付企業年金は、あらかじめ定められた規約に基づき、将来の給付内容を定める企業年金制度です。
厚生労働省は、確定給付企業年金について、労使の合意により比較的柔軟な制度設計が可能で、受給権の保護が図られている制度と説明しています。制度には、事業主が実施する「規約型」と、企業年金基金が実施する「基金型」があります。
主な特徴
- あらかじめ定めた給付内容に基づいて退職後の給付を行う
- 労使の合意により制度内容を設計する
- 年金資産を会社の外で管理・運用する
- 制度の継続には財政状況の確認や適切な運営が必要
- 一時金または年金など、規約に応じた給付方法を検討できる
検討しやすい企業の例
- 従業員に一定の給付水準を示したい
- 福利厚生制度を充実させたい
- 長期雇用や人材定着を重視している
- 継続的に制度を管理する体制を整えられる
- 会社の人事制度に合わせて給付設計を検討したい
確認しておきたい点
給付内容をあらかじめ定めるため、会社は将来の給付に必要な費用や財政状況を継続的に確認する必要があります。
導入時だけでなく、従業員構成や経営環境が変化した場合の運用も考えて制度を設計することが大切です。
2.企業型確定拠出年金(DC)
企業型確定拠出年金は、会社が掛金を拠出し、加入者である従業員が運用商品を選択する制度です。
将来受け取る金額は、拠出された掛金とその運用結果によって変わります。厚生労働省は、確定拠出年金を、拠出された掛金と運用益の合計をもとに将来の給付額が決まる制度と説明しています。
主な特徴
- 会社が規約に基づいて掛金を拠出する
- 従業員が用意された運用商品の中から選択する
- 将来の給付額は運用結果によって変わる
- 従業員の資産形成を支援できる
- 転職時などに資産を他の制度へ移せる場合がある
- 制度導入後も継続的な管理と従業員への情報提供が必要
検討しやすい企業の例
- 従業員の資産形成を支援したい
- 会社の掛金負担を一定の範囲で設計したい
- 福利厚生制度として採用活動にも活用したい
- 従業員自身が資産運用に関わる制度を導入したい
- 制度説明や投資教育を継続できる体制を整えられる
確認しておきたい点
企業型DCでは、従業員が運用商品を選ぶため、制度の仕組みや資産運用について理解できるようにする必要があります。
事業主には、加入時だけでなく加入後も、継続的に適切な投資教育を提供することが求められています。
3.中小企業退職金共済(中退共)
中小企業退職金共済は、中小企業の従業員を対象とした国の退職金共済制度です。
事業主が中退共と退職金共済契約を結び、従業員ごとに毎月の掛金を納付します。従業員が退職したときは、中退共から本人へ退職金が直接支払われます。
主な特徴
- 中小企業向けに設けられた退職金制度
- 事業主が従業員ごとの掛金を納付する
- 退職金は中退共から従業員本人へ直接支払われる
- 会社内で退職金資金を管理する負担を抑えやすい
- 新規加入や掛金増額に一定の助成措置がある
- 制度の仕組みが比較的わかりやすい
検討しやすい企業の例
- 初めて退職金制度を導入する中小企業
- 社内で複雑な制度管理を行うことが難しい
- 従業員ごとに計画的に退職金を準備したい
- 国の制度を利用して退職金制度を整えたい
- 比較的簡素な運用を希望している
確認しておきたい点
加入できる企業や対象となる従業員には要件があります。
また、掛金額や加入期間によって退職金額が決まるため、自社が目標とする給付水準と合っているかを確認する必要があります。
中退共だけで目標とする退職金水準に届かない場合は、自社制度などとの組み合わせを検討することもあります。
4.自社退職金制度・退職金規程
自社退職金制度は、会社が独自に対象者、支給条件、計算方法、支給時期などを定める制度です。
会社の経営方針や人事制度に合わせて設計しやすい一方、将来の退職金額や資金の準備方法、社内での管理方法を慎重に検討する必要があります。
主な特徴
- 会社の方針に合わせて柔軟に制度設計できる
- 勤続年数、基本給、役職、評価などを反映できる
- 対象者や支給条件を会社ごとに定められる
- DB、DC、中退共などと組み合わせることもできる
- 退職金規程と実際の運用を一致させる必要がある
- 将来の支払いに備え、退職金原資を準備する必要がある
検討しやすい企業の例
- 会社独自の人事方針を退職金に反映したい
- 勤続年数や役職、評価などに応じた制度を設けたい
- 外部制度だけでは希望する給付設計が難しい
- 既存の退職金制度を見直したい
- 中退共などと組み合わせて制度を整えたい
確認しておきたい点
会社独自の制度は柔軟性がある一方で、将来の支給額が増えすぎないか、会社が継続して負担できるかを確認する必要があります。
また、支給対象者、支給条件、計算方法などを退職金規程に明確に定め、就業規則や実際の運用との整合性を保つことが重要です。
退職金の支給額や支給率を引き下げるなど、従業員に不利益となる変更を行う場合は、変更の必要性や合理性、従業員への説明などを含め、慎重な検討が必要です。
主な退職金制度の比較
| 制度 | 退職金・給付の決まり方 | 主な運用主体 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 確定給付企業年金(DB) | 規約に基づき給付内容を設定 | 事業主または企業年金基金 | 従業員が将来の給付を見通しやすい |
| 企業型確定拠出年金(DC) | 掛金と運用結果によって決定 | 事業主・加入者・関係機関 | 従業員自身が運用商品を選択する |
| 中小企業退職金共済(中退共) | 掛金月額と納付期間などにより決定 | 勤労者退職金共済機構 | 中小企業が比較的導入・管理しやすい |
| 自社退職金制度 | 会社が定める計算方法により決定 | 会社 | 会社の方針に合わせて柔軟に設計できる |
この比較は、制度の大まかな違いを示したものです。
実際には、対象となる企業や従業員、掛金・給付の設計、必要な手続き、税務上の取扱いなどを個別に確認する必要があります。
一つの制度だけを選ぶとは限りません
退職金制度は、必ずしも一つの制度だけで構成する必要はありません。
例えば、
- 中退共を退職金の基本部分として利用する
- 会社独自の退職金制度を上乗せする
- 企業型DCと自社制度を組み合わせる
- DBとDCを役割に応じて併用する
など、複数の制度を組み合わせる方法も考えられます。
複数の制度を組み合わせることで、会社の負担や従業員の資産形成などに配慮した制度を設計できる場合があります。
一方で、対象者や給付内容、社内管理が複雑になることもあるため、制度全体のわかりやすさや運用体制を確認する必要があります。
退職金制度を選ぶ際の主な確認事項
1.制度を設ける目的
採用、人材定着、長期勤続への報奨、老後の資産形成支援など、制度を導入する目的を整理します。
目的によって、適した制度や給付設計は異なります。
2.対象となる従業員
正社員だけを対象とするのか、契約社員やパートタイマーなども対象とするのかを検討します。
雇用形態ごとの取扱いについて、合理的に説明できるようにすることも大切です。
3.会社が負担できる費用
現在の従業員数だけでなく、将来の採用や賃金上昇、勤続年数の長期化なども踏まえて考えます。
一時的に負担できるかではなく、長期間継続できるかを確認します。
4.従業員にとってのわかりやすさ
制度内容が複雑すぎると、従業員が自分の退職金や資産形成について理解しにくくなります。
会社の担当者が説明しやすく、従業員も理解しやすい制度かを確認します。
5.社内の運用体制
制度導入後には、入社・退職時の手続き、掛金管理、規程改定、従業員説明などが必要になります。
社内でどこまで対応できるか、外部専門家へどこまで依頼するかを整理します。
6.将来の制度変更への対応
会社の規模や人事制度、経営環境が変われば、退職金制度の見直しが必要になることがあります。
将来の変更や他制度への移行も想定しながら検討することが大切です。
会社の状況別に考えられる選択肢
初めて退職金制度を導入する場合
制度のわかりやすさや管理のしやすさを重視する場合は、中退共や比較的簡素な自社制度などが検討対象になります。
ただし、従業員数、目標とする退職金水準、将来の人員計画などによって適した方法は異なります。
従業員の資産形成を支援したい場合
企業型DCなど、従業員自身が運用に関わる制度が選択肢になります。
導入後の投資教育や継続的な情報提供まで含めて検討する必要があります。
給付内容を明確にしたい場合
DBや自社制度など、一定の計算方法や給付内容を定める制度が検討対象になります。
一方で、会社側は将来の給付負担を確認しながら運営する必要があります。
会社独自の人事制度と連動させたい場合
自社退職金制度を設け、役職、評価、勤続年数などを反映する方法があります。
賃金制度や評価制度、定年制度などとの整合性を確認することが重要です。
現在の制度を見直したい場合
既存制度を廃止して別の制度へ移るだけでなく、現在の制度を一部残したり、外部制度を追加したりする方法もあります。
既存従業員への影響や移行措置を含め、慎重に検討する必要があります。
制度が決まっていなくても相談できます
退職金制度について相談する際、最初からDB、DC、中退共などの制度を決めておく必要はありません。
むしろ、特定の制度を前提にせず、
- 現在の会社の状況
- 制度を設ける目的
- 対象となる従業員
- 会社が負担できる範囲
- 将来の採用や事業計画
- 社内の運用体制
などを整理したうえで、複数の選択肢を比較することが大切です。
掲載社会保険労務士の対応制度や経験を確認し、制度選びの段階から相談できる社会保険労務士をお探しください。
社会保険労務士に相談できる主な内容
退職金制度に対応する社会保険労務士には、例えば次のような内容を相談できます。
- 会社の現状や制度導入目的の整理
- DB、企業型DC、中退共、自社制度の比較
- 対象者や支給条件の検討
- 会社負担や将来の支給見込みの整理
- 複数制度を組み合わせる場合の検討
- 退職金規程の作成・改定
- 現在の退職金制度の見直し
- 従業員への説明方法の検討
- 導入後の運用体制の整備
- 他の専門家や関係機関との連携
対応できる制度や支援範囲は、社会保険労務士によって異なります。各プロフィールをご確認ください。
よくある質問
どの退職金制度が最もよいのでしょうか?
すべての会社に共通して最もよい制度があるわけではありません。会社の規模、従業員構成、導入目的、費用負担、運用体制などによって適した制度は異なります。
従業員数が少なくても導入できますか?
小規模な企業でも検討できる制度があります。ただし、制度ごとに対象企業や加入条件などが異なるため、会社の状況に合うか確認する必要があります。
複数の退職金制度を併用できますか?
制度の組み合わせを検討できる場合があります。ただし、対象者や給付内容、規程、社内管理が複雑になることもあるため、制度全体を整理する必要があります。
退職金制度と退職金規程は同じものですか?
退職金制度は、対象者、給付内容、計算方法、資金の準備などを含む仕組み全体を指します。退職金規程は、支給条件や計算方法などを社内ルールとして定めるものです。
現在の制度を別の制度へ変更できますか?
変更を検討できる場合があります。ただし、従業員への影響、既存の権利、移行措置、必要な手続きなどを慎重に確認する必要があります。
制度が決まっていなくても相談できますか?
はい。制度選びの段階から相談できる社会保険労務士も掲載しています。会社の状況や希望を整理するところからご相談ください。
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退職金制度は、制度ごとの特徴だけでなく、会社が将来にわたって継続できるか、従業員にとってわかりやすいかという視点で考えることが大切です。
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